BGM:MIKO
家族
列車から降りるとホームには人影もなく
暗闇に木枯しが痛く顔に突き刺さった
何の輝きもなく帰ってくるつもりはなかった
心とは逆に体が動き
家族の顔を求めていた
遠くに工場の大きな煙突
赤紫色の煙が夜空を焦がしていた
絶望感にふと立ち止まってしまう
こんな筈ではないと誰かがつぶやいた
帰ってどうなるのだともう1人の自分が言った
見慣れた古ぼけた街並みを抜けると
色褪せた壁の家が待っていた
昔は大きかった家がいつの間にか
手で掴めそうなほど小さくなっていた
窓の灯りが早く来いと言っている
ガラス戸を開けると懐かしいにおいが
僕の心の中に染み込んできた
何の輝きもなく帰ってくるつもりはなかった
心とは逆に体が動き
家族の顔を求めていた
「あれ? どうしたの」と母が驚き
「あっ、 お兄ちゃんだ」と妹たちははしゃぎ
父は何も言わず僕を見ていた
帰って来てよかったと心がささやいた