虚  空Music:ori

 虚空

 

 あれから何年経つのだろう

 君のこと好きだったのに

 

 電車にゆられて君に会いに行った

 君の町には大きな川が流れていた

 初めて会った場所から

 工場の煙突が何本も見えた

 

 土手の下に捨てられた古タイヤ

 僕達は腰を降ろして何時間も話した

 煙突の向こうに沈む夕陽を背に

 君の姿は眩しく映った

 

 僕は君の中に天使を見た

 若さというパスポートを持って

 二人だけの大空を飛んだ

 君はいつも一人ぼっちだと呟いた

 

 君が淋しさに耐えかねた時

 僕は君を腕の中に抱きしめた

 苦しくて君が初めて泣いた時

 すべて僕に話してごらんと言った

 

 君が全部打ち明けた時

 君の中に天使が見えなくなった

 君が近づけば近づくほど

 僕は君を遠ざけるようになった

 

 あれから何年経つのだろう

 君の町には大きな川が

 今も変わらず流れていた

 土手の下の古いタイヤはなくなり

 二人の言葉の跡だけが捨てられていた

 

 君のこと好きだったのに

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